Android 旧版「新しい日本の歴史 」改訂1.1.5
第1章 原始と古代の日本
第10問
「およそ1万年前、氷河時代が終わった日本列島は気候の温暖な「温帯」に属し、周囲には暖流が流れていた。クリ・ナラ・ブナなどの樹木が国土を覆い、木の実やイモなどに恵まれ、川魚、海の魚、貝類、さらにはイノシシ・シカ・ウサギなどの動物も生息していた。」
○か ×か
以下の長い解説文章、
人々は、豊かな自然と調和して暮らし、約1万年続いた縄文時代は、その後の日本文化の基盤をつくりました。クリ・ナラ・ブナなどの落葉照葉樹類が列島を覆うこと事によってもたらされる豊かさについては、
以下のような「科学的な原理解明」が、近年なされている。
とありましたが、今回の改訂で
以下を ここへと 移設いたしました。
キーワードは 「鉄の惑星地球」「酸素を得た地球の宿命」です。
↓
「地殻岩石の風化粒子と広葉樹等の落ち葉が堆積した腐植土層は保水層でもあり、空気を遮り、酸素のない嫌気な状態下、三価の鉄は還元されてニ価の鉄となり易い状態が形成される。
鉄は酸素との結合で三価となり、酸素を放するとニ価となる。酸素の受け取りと放出によって化合物の構造が変化しない鉄は酸素の運搬に何度でも使える安定した物質であり、生命維持に必要不可欠な存在、悠久の時のなかでリサイクルされてきた存在です。
岩石や土壌中には酸化鉄が含まれている。酸化鉄は非水溶性であり、大きく、そのままでは植物は利用できない。(植物は根から酸を分泌し、鉄を吸収している)
一方、腐植土中には枯葉、動物の遺骸など種々の有機物が混ざっている。これらは昆虫類や微生物によって分解され、腐食物質となる。このうち、水に溶解する物質はフルボ酸と呼ばれ、分子量が1,000程度、水酸基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基など多くの官能基を有している。多くの金属はこれらの官能基と化学結合して錯体を形成する。
無酸素部位で生成された鉄イオンはフルボ酸と結合してキレ-トを作るが、これは極めて安定していて離れる事はない。酸化される事なく、稲を育て、やがて海へと注ぎこみ、植物プランクトンや海草に吸収され、海に豊饒をもたらす。
光合成生物はフルボ酸-鉄錯体を、無定型の粒状鉄よりも5~10倍以上速い速度で吸収することができる。また窒素、隣、珪素の栄養塩類も腐植土中での有機物の分解や岩石の風化により海に流入する。従って、森林からは多種の栄養素が河川や沢水を通して海へ運ばれる。このことがプランクトンの増殖や海藻の成長に大きな影響を与えている。
地球は、水の惑星と言われるが、実は鉄の惑星でもある。
地表の3/4は海に覆われているものの、質量に於ける水の割合は0.03%ほどにしか過ぎない。
地球を構成する物質で最多なものは鉄であり、30~40%の存在量と推定されている。地球創成期に表面近くにあった鉄は重力によって次第に沈み込み、地球内部の核に多く存在する。
地球創成期の大気は主に水蒸気、二酸化炭素、塩化水素、窒素で構成されていた。地表が冷えてくると、塩酸を含む強-酸性の降雨により、地表には酸性の「海」が誕生する。鉄の多い若い地球の「海」には、酸に溶けた鉄が大量に含まれていたと推定されている。酸性度の強い雨は岩石との化学反応により中和され、二酸化炭素は炭酸カルシウム(石灰)として海底に沈み取り除かれてゆく。海へ流れ込んだナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属の中和作用によって海は弱アルカリへ変化したと考えられている。
そしてその後の大きな変化は、光合成の機能をもった細菌やバクテリヤの働きによってもたらされた。
窒素と炭酸ガスの大気に、酸素が次第に増え、海水中に溶けた鉄は酸化鉄へと変化、粒子となり海底へと沈殿する。
海に大量に溶けていた鉄は激減し、海の生物にとっての環境は常に鉄不足状況へと変化してゆく事となる。
生体に取り込める鉄に不足するという環境的運命を背負い、酸素無しに生存し得ない地上の殆どの生命は、体内に鉄を貯蔵し、リサイクルする機能の獲得が生き残る術となっている。
貧鉄の海に、葉緑素・生命が乏しいことは衛星解析によっても確認されている。」
以上のことを踏まえると、温帯モンスーンの日本では、本来標高の高いところに育つ針葉樹である杉や檜等を(本来の広葉樹・照葉樹を伐採した上で)急峻な山地に植えることは、水分涵養・保水機能の低下による土砂崩れだけでなく(挿し木による植林では直根が生えず、線香の様に細く密集した山々は山林崩壊を起こす)、海焼けなど海の荒廃をもたらすことに繫がる可能性、日本の文化的基盤の破壊につながる可能性が大きいといえます。
昭和26年制定の森林法にもとづいた、戦後の木材不足解消で始まった分収造林事業・植林事業は国土保全の観点から、抜本的な改革が求められています。
参考文献:
・森が消えれば海も死ぬ 陸と海を結ぶ生態学
松永勝彦著 講談社 ブルーバックス
1993年07月20日初版発行
・海と海洋汚染
松永勝彦・久万健志・鈴木祥広 共著 三共出版
地球環境サイエンスシリ-ズ 2
1996年11月初版発行
・The role of terrestrial humic substances on the shift of kelp community to crustose coralline algae community of the southernHokkaido Island in the Japan Sea.
Journal of Experimental Marine Biology and Ecology,
241 (1999) 193-205 松永勝彦他
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